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地球バス紀行

毎週火曜22時オンエア

人間の鼓動に出会う旅、一篇の旅物語
旅の案内役は「バス」です。大陸を横断する長距離バスから都市部を毛細血管のほうに走り回る生活導線バス。早足の旅ではけっして見えて来ない車窓の風景が、乗り合わせた人との出会いが、いろいろな物語を紡ぎだしていきます。

2012年2月7日 O.A.

#43 カラマ発南北縦断3000km

チリ

地図

南北に4300キロ、一つの国で赤道近くから南極まであるチリで、移動の主役は長距離バス。バスの車窓からは北部は荒涼とした砂漠、中央部の首都サンティアゴでは近代的な都市、南部は豊かな森林やフィヨルドと面白い変化を見ることが出来る。チリ北端の街、ペルーと国境を接するアリカ。「常春の街」として知られ、最近では南米屈指のリゾート地として開発がすすむ。港に人だかりができているので覗いてみると、そこには漁船の合間を縫うように泳ぐアザラシと羽を繕うペリカンの姿があった。市場ではペルー産やボリビア産の果物が並び国境の街を印象づける。人々の営みが自然にとけ込んでいるこの街を出発し、南へ向けて旅が始まる。

カラマ
アリカを出発し9時間。砂漠の中に忽然と姿を現すオアシスの街「カラマ」。
世界最大の銅山チュキカマタがこの街を活気づけている。
深さ1000メートルもある露天掘りの銅山。そこを行き交うトラックはバスよりも大きく圧巻。カラマへ来るバスの中で出会ったマリオさんは、このトラックの整備技師。出産を控えた妻は実家のあるアリカへ里帰り中。週に一度休日を利用し深夜バスで妻のもとへ向かうマリオさん。バスはマリオさんと家族を結ぶ大切な絆。
カラマを出発し向かうのは、はるか1200キロ南、チリの首都サンディアゴ。23時間の旅だ。車窓にうつる砂漠に夕日が沈み、夜のハイウェイをひた走る。日がのぼり、仲良くなった旅仲間の顔にも疲れが浮かぶ頃、見えてきたのはアンデスの山並と、その裾野に広がるサンティアゴの街。

サンティアゴ
2007年にサンティアゴの交通機関を一新した「トランサンティアゴ」。それまで個人経営が多く、時刻表やバス停すら確定していなかったサンティアゴ市内の路線バスを一括管理し、地下鉄等他の高尿期間との連動をはかった。バスに乗るには市内の至る所で販売されているbipカードを購入する。トランサンティアゴで市内を散策。
バロック建築の宮殿や美術館が建ち並ぶ旧市街。この街でひと際目を引くのがサンディアゴ大聖堂。この周りに集まるレストランを覗くとテラスでは多くの人たちがワインを楽しんでいる。そうだ!チリで一番おいしいワインを求めワイン作っているワイナリーへ行きたい!市内の酒屋さんで聞いたおいしいワインの産地イスラ・デ・マイポへ向かうローカルバスで西を目指す。

イスラ・デ・マイポ
ローカルバスで1時間。ぶどう畑が見えてきた。いまチリで最も活気のあるワイナリーがあるイスラ・デ・マイポ。1軒のビーニャのぶどう畑を訪ね、農園の管理者に出会った。マイポの土壌と子供のように手をかける自分たちの愛情が世界一のワインを生み出すと胸を張る管理者のエクトールさん。彼の誘いで、あるパーティーに出かけることになった。エクトールさんの親戚、レオナルドの誕生日パーティーだ。レオナルドはチリの名門サッカーチーム・コロコロのプレイヤー。
チリのホームメイドパーティーでサッカー談義に花が咲く。
旅は一気に南へ。車中で日が暮れ、再び太陽がアンデスを照らす頃、車窓には森林と湖が映えるようになる。14時間の旅、到着したのはプエルト・モン。車中仲良くなったバスドライバーのイゴルさんが自宅へ誘ってくれた。待っていたのは4歳になる一人息子のアレキサンダー君。翌朝再びサンティアゴに向けてハンドルを握るイゴルさん。朝食は家族団らんのできる温かな空気が満ちていた。