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地球バス紀行

毎週木曜21時オンエア

人間の鼓動に出会う旅、一篇の旅物語
旅の案内役は「バス」です。大陸を横断する長距離バスから都市部を毛細血管のほうに走り回る生活導線バス。早足の旅ではけっして見えて来ない車窓の風景が、乗り合わせた人との出会いが、いろいろな物語を紡ぎだしていきます。

2016年9月15日 O.A.

#271 ビルバオ発 美食の都サンセバスチャンへ

スペイン
地図

今回の旅の舞台は、スペイン北部のバスク自治州。フランスとの国境に近く、風光明媚なカンタブリア海を望む海辺の地域です。旅の目的は、ずばりバスクの美食巡り。「食は北にあり」と言われるほど、この地域にはおいしい料理がたくさんあります。伝統の家庭料理から絶品ピンチョスまで、バルをはしごしながらのグルメざんまい。「美食の都」サンセバスチャンでは三ツ星レストランの極上の一皿も!
おおらかなバスク人と触れ合いながら、魅力溢れる絶品料理の数々を味わい尽くします。

ビルバオ

美食の地・バスク地方を巡る旅の始まりは、ビルバオから。町にはグッゲンハイム美術館やスビスリ橋など、世界に名だたる有名建築家が手がけた建築物が立ち並ぶアートの町です。地元の人に教えてもらったのは「ピルピル」という面白い名前の伝統料理。しかも“揺すって作る”だとか。薦められた旧市街のレストランを訪ねてみると、ピルピル作りの真っ最中。塩ダラに、熱々のオリーブオイルを注ぎひたすら揺すり続けると…、なんとオリーブオイルがトロトロのソースに大変身。ニンニク風味とタラのうまみがソースに溶け出した味わい深い料理でした。
夜、旧市街のバルに立ち寄ると地元のおじさん集団と出会いました。自らを「チキテロ」といい、少量のワインを一杯ずつ飲み、何軒ものバルを“はしご”するのがバスクの習わしなんだそうです。そんな「チキテロ」のお薦めは、バスクの名酒「チャコリ」。近郊の港町・ゲタリアが産地だと教えてもらいました。

ゲタリア

翌朝、バスクの名酒「チャコリ」を求めてゲタリアへ。ビルバオから約2時間ほど東にある港町です。
町の広場には威風堂々、マゼランと共に大航海に挑み世界一周を果たした地元の英雄・エルカノの銅像が立っていました。チャコリ探しの前に町を散策していると、店の軒先でイワシの網焼きをしているレストランを発見。塩味だけのシンプルな味付けでしたが、鮮度抜群で脂のノリも最高でした。
町中を離れ住宅街を歩いていくと、山の斜面に一面のブドウ畑が広がってきました。「チャコリ」は中世の頃から作られている微発砲性の白ワイン。畑で出会った農家の人が、できたばかりのチャコリを飲ませてくれました。炭酸が口の中ではじけてフルーティな香りが広がり、何杯でもいけそうなやさしい口当たりでした。緑豊かな大地と北の海からもたらされる豊富な恵み。食材の宝庫だからこそバスクの美食も発展したのだと改めて感じました。

サンセバスチャン

ゲタリアを後に、いよいよ「世界一の美食の都」と呼ばれるサンセバスチャンへ。19世紀後半スペイン王室が夏の離宮を建てて以来、高級避暑地となったサンセバスチャンには現在ミシュランの星を持つレストランが9軒。人口一人あたりの星獲得率は世界一です。早速、10年連続三ツ星を獲得し続ける名店で新バスク料理「ヌエバ・コシナ・バスカ」を堪能することに。希少価値の高いグリンピースを使ったスープや日本の“うま味”をふんだんに生かしたスズキのグリルなど、どれも絶品ばかり。
オーナーシェフの方に、新作料理を作り出す“実験室”を案内してもらいました。液体窒素を使用して作るヨーグルトアイスはまさにイリュージョン。次々と新しい料理を世に送り出して来たオーナーの目の輝きは、好奇心の塊のようでした。
旧市街のバルで名物のピンチョスを楽しんでいると、“美食クラブ”のメンバーと出会いました。料理を作って食べて、仲間同士絆を深めるバスク伝統の男性の社交クラブなんだそうです。シンプルで豪快な男の手料理…と思いきや、腕前はかなりのもの。高級レストランさながらの繊細な料理が次々と!こうした食に対する関心の高さが、バスクを美食の都へと発展させる大きな原動力になっているんだなと感じました。