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地球バス紀行

毎週木曜21時オンエア

人間の鼓動に出会う旅、一篇の旅物語
旅の案内役は「バス」です。大陸を横断する長距離バスから都市部を毛細血管のほうに走り回る生活導線バス。早足の旅ではけっして見えて来ない車窓の風景が、乗り合わせた人との出会いが、いろいろな物語を紡ぎだしていきます。

2016年5月26日 O.A.

#256 ティンプー発 ツルが舞い降りる谷へ

ブータン
地図

旅の始まりは、ブータン王国の首都ティンプー。標高2300メートルにあるこの首都の人口はおよそ10万人。この国には信号機がひとつも無いんです。大通りの交差点ではお巡りさんが手信号で車をさばきます。
街なかの広場ではブータンの国技である弓技の大会が開かれていたり、民族衣装のお店を見たり、そしてマニ車のあるお堂をみたりとブータンらしさを満喫。

街の人に、ティンプーよりも温暖でのんびりしたプナカという町のを薦められたので、バスでその町に向かう事にします。
ティンプーから乗ったバスはこの町よりもさらに高い標高3150メートルの峠を越えて崖すれすれの道を走ります。新人ドライバーさんと聞いてヒヤヒヤしながら、バスはヒマラヤ山脈の雄大な景色の中を走ります。
標高は一気に下がって1350メートルの町、プナカに到着。道中に行くよう薦められたのは「ゾン」というお寺と県庁を兼ねた大きな建物。プナカのゾンはブータン建築の粋を集めた荘厳な造りで、現国王のワンチュク国王が結婚式を挙げた場所。たしかにすごくきれいで立派な場所です。

ティンプーの朝の気温が3℃だったけれど、この町は言われていたように温暖で半袖でも過ごせるくらい。バナナやサボテンも育つくらい温暖な土地。実はブータンの緯度は沖縄と同じくらい。ただ標高が高いのでどうしても寒い場所が多くなるけど、ここは暖かい。市場にもたくさんのフルーツが並んでいます。その中にひときわたくさんあったのが唐辛子。物凄い種類がどれも山の様に売られていて、ブータンのお母さんたちはそれを山のように買って行きます。家族みんなの食事を作ると山のような唐辛子も2日でなくなってしまうんだとか。そういえばブータン料理ってどれも辛いんですよね。

途中見かけた民家の新築工事の現場、男性に交じってたくさんの女性たちが壁を固める作業をしています。なんでもブータンでは家を建てる時、そのご近所さんが総出で手伝ってくれるとか。誰かが家を建てる時は手伝う、自分の家を建てる時は手伝ってもらう、そうやってずっとやって来ているんだって。

プナカの町で教えてもらった次のおすすめの場所はポプジカ谷。なんでも今は、ツルが年に一度チベットから越冬しにくる時期で、ポプジカ谷に行けばその珍しい鶴を見ることができるとか。チャンスとあれば行くしかないのでポプジカ谷行きのバスに!・・・と思ったらそのバスは故障中でいまは運休?!どうしようかと思っていると乗り合いタクシーなら行ってるよと。乗り合いならそれもある意味バス!ということでそのタクシーでポプジカ谷まで3時間半。着いたらもう陽暮れの時間で、今夜の宿、どうしよう・・・。道で出会ったおじさんに聞いてみたら、なんでもこの辺りは民泊をやっているとかで、一件のお宅を紹介していただき、5人家族の住まうお家でお世話になることになりました。

翌朝、唐辛子たっぷりの朝食をいただき、鶴の飛来する場所へ。しばらく待っていると優雅に舞う鶴の一団がやってきました。絶滅危惧種のオグロヅル。極寒のチベットからヒマラヤ山脈を越え、冬の間だけブータンにやってくるオグロヅルがやってくると、ブータンは本格的な冬の到来になるそうです。毎年計ったように同じ時期にやってくる鶴を、地元の人たちは神様のように思っているんだとか。そんな素朴な人達と触れ合えたブータンの旅でした。