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地球バス紀行

毎週木曜21時オンエア

人間の鼓動に出会う旅、一篇の旅物語
旅の案内役は「バス」です。大陸を横断する長距離バスから都市部を毛細血管のほうに走り回る生活導線バス。早足の旅ではけっして見えて来ない車窓の風景が、乗り合わせた人との出会いが、いろいろな物語を紡ぎだしていきます。

2016年5月5日 O.A.

#254 シーア派最大の行事 “アーシュラー”

イラン
地図

今回の旅先は中東の国イラン。かつてシルクロードの交差点として栄えた古都タブリーズを巡ります。イランの人口の8割以上を占めるているのが、シーア派のイスラム教徒。そのシーア派にとって最も重要な行事“アーシュラー”に遭遇し、町を満たす熱気を体感します。

シルクロードの古都タブリーズ

イラン北部最大の都市タブリーズは古くから様々な民族の王朝が都を置き、シルクロードの交易拠点として栄えた町。町の中心部には往時の繁栄を偲ばせる城塞の遺跡「アルゲ・タブリーズ」が残ります。町の通りで出会った男性に強引にお茶に誘われ、着いて行くとそこは中古のミシン屋さん。手回し式のアンティークのようなミシンが今も多くの家庭で大切に使われているのだとか。ご主人からイラン式に紅茶のもてなしをうけてしばしおしゃべりに興じます。

世界最大級のバザール

2010年、ユネスコの世界遺産に登録されたタブリーズのバザールは、全長6キロメートルにも及ぶアーケードが縦横に張り巡らされ、そこに7000をこえる数のお店が軒を連ねています。シルクロードの隊商たちが商いの拠点として使った隊商宿“キャラバンサライ”の跡が今も残る歴史あるバザールを巡ると貴金属店が集まる「アミール・バザール」や有名なペルシャ絨毯が集まる「モザッファリエ・バザール」が。絨毯の品質を見る基本や、値段はどのように決まるのか?などなど、店主たちの話しに興味が尽きません。

郊外の奇岩集落・キャンドヴァーン村

イラン最大の宗教行事が明後日に迫っているという耳より情報をゲット。いったんタブリーズを出て、おすすめされた郊外の観光地、キャンドヴァーン村を訪れる事に。バスとタクシーを乗り継いでたどり着いたのは高原の秘境ともいうべき奥地の集落でした。円錐状の岩山の内部をくりぬいた住居が谷に沿って延々と並ぶ様はまさに奇観。800年ほどの昔、モンゴル族の侵略から逃れるために奥地の岩山に定住するようになったという遊牧民族を祖先にもつ村人が、今も同じ岩の家に暮らし続けています。村人の厚意で家に上がらせてもらい、郷土料理の「アーブグシュート」をいただきます。

イラン最大の宗教行事“アーシュラー”

シーア派イスラム教徒にとって“アーシュラー”はシーア派の祖と言われるイマーム・フセインの殉教を追悼する最も重要な行事。この日タブリーズでは町のあちこちで有志の男たちが飲み物や食べ物をふるまう“施し”が行われます。アーシュラーのクライマックスはバザールの中心地「モザッファリエ・バザール」で行われる伝統行事“ザンジールザニー”。大ホールに集った大勢の男達が祈りを唱えながら手に持った鎖の束で自らの体を打ち据える熱気に満ちた光景に、アーケードを埋め尽くす見物の群衆も酔いしれます。