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地球バス紀行

毎週木曜21時オンエア

人間の鼓動に出会う旅、一篇の旅物語
旅の案内役は「バス」です。大陸を横断する長距離バスから都市部を毛細血管のほうに走り回る生活導線バス。早足の旅ではけっして見えて来ない車窓の風景が、乗り合わせた人との出会いが、いろいろな物語を紡ぎだしていきます。

2016年2月11日 O.A.

#244 混沌の街角 プノンペン

カンボジア
地図

今回の舞台は、カンボジアの首都・プノンペン。海外からの投資を受け、急速な経済成長を遂げる、カンボジア随一の大都市です。躍進の波に乗ろうと、毎日を懸命に生きる人々。そんな彼らの暮らしと触れ合う旅。近年、日本のODAの援助によって運行が始まったという3本の路線バスに乗って、プノンペンの町をくまなく巡ります。

早朝から大賑わいのプノンペンの町。路上で屋台を構えて商売をする人々の姿が、あちらこちらに見られます。カンボジアならではの麺料理、氷屋、理髪店などなど。その種類は様々で、まるで路地にプノンペンの人々の生活が凝縮されているようです。町の中心地にある市場では、四方八方から威勢のいい声が飛んできます。プノンペンの主婦たちの台所とも言える市場で、庶民の食文化を垣間見ることができました。

国民の約9割が敬虔な仏教徒だというカンボジア。町中で托鉢をしている僧侶と出会うことも珍しくありません。偶然立ち寄った寺では、境内で祈りを捧げる人々や、僧侶に悩み事を相談する人々の姿が。経済発展により、町が変貌を遂げる今なお、敬いの心を大切にするプノンペンの人々。宗教がごく自然に生活に溶け込む雰囲気を体感できました。

カンボジアを語る上で避けられないのは、ポル・ポト政権下で行われた大虐殺です。1970年代に政権の座に就いたポル・ポトは、国の統一を図るという名目で、知識人や反体制派に属していた罪なき人々を虐殺していきました。犠牲者の数は、100万人とも、200万人ともいわれています。プノンペンの町の外れにあるキリングフィールドは、当時の処刑場。残酷な歴史を後世に伝える慰霊の地として残されています。当時、肉親が虐殺されたという夫婦と一緒に、キリングフィールドを訪れました。

決して忘れることのできない記憶をそれぞれの胸の内にしまい、目まぐるしく発展する今日のプノンペンで生きる人々。訪れる人を圧倒するほどの躍起と活気に満ちた町には、たくましさと優しさを兼ね備えた笑顔が溢れていました。そんな混沌とした町を巡った、今回の旅でした。