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地球バス紀行

毎週木曜21時オンエア

人間の鼓動に出会う旅、一篇の旅物語
旅の案内役は「バス」です。大陸を横断する長距離バスから都市部を毛細血管のほうに走り回る生活導線バス。早足の旅ではけっして見えて来ない車窓の風景が、乗り合わせた人との出会いが、いろいろな物語を紡ぎだしていきます。

2015年7月30日 O.A.

#221 ナポリ 魅惑の路地巡り

イタリア
地図

ナポリを見て死ね…

今回のバス旅の舞台は、南イタリアの古都・ナポリ。「ナポリを見て死ね」ーーーこれはイタリアの諺で、風光明媚なナポリを見ずに死んでしまっては、生まれてきた甲斐がない、という意味なのだとか。今回は、世界遺産にも登録されている旧市街を起点に、市内を縦横無尽に走る路線バスで、ナポリの町を巡ります。

サン・ジェンナーロ大聖堂

市民の足となっている路線バス。満員の車内は、気さくでおしゃべりなナポリっ子たちで大賑わいです。親切な乗客に教えられて訪れたのは、ナポリの守護聖人サン・ジェンナーロが奉られている大聖堂。精巧な彫刻が施された建物の中へ一歩踏み入ると、厳かな雰囲気が漂う礼拝堂がありました。サン・ジェンナーロは3世紀に実在し、キリスト教を迫害していた当時のローマ皇帝によって処刑され、殉教したとされています。宝物博物館には、ナポリ市民とサン・ジェンナーロの間で交わされた“契約書”が展示されていました。これは、町を天災などから守ってくれるよう、市民がサン・ジェンナーロにお願いした物なのだそうです。そのおかげで、これまで、ナポリの町は、あのヴェスヴィオ火山の噴火の被害を免れているのだとか。しかも、この契約はサン・ジェンナーロの死後に結ばれたというから驚きです。その他にも、裕福な市民からサン・ジェンナーロへ贈られた高価な宝石や王冠などが、所狭しと並べられていました。今なお愛され、敬い続けられている守護聖人。ナポリの人々の信心深さを感じられる場所でした。

路地のパーティー?“タランテラ”

バスで出会った男性に“パーティー”があると連れられて、旧市街の路地裏へ。そこには、派手な衣装に身を包み、様々な楽器を手に持った人々が集っていました。聞けば、その中心となり“船長”として慕われている男性は大道芸人だそうで、彼の家の前の路地に近所の子供たちを定期的に集め、一緒に食事をしたり、ナポリの伝統芸を教えたりしているのだとか。みんなで食事を楽しんだ後、「タランテラ」というナポリ庶民の間で親しまれている伝統舞曲に合わせて、その場に集まった人々が歌って踊り始めました。そんなリズムに誘われて、道行く人までもがその輪に加わり、路地裏は益々賑やかになっていきます。見ているだけで、おのずと体が動き出すような、自由で陽気な雰囲気。人と人との繋がりを大切にする“ナポリ気質”が、路地裏に溢れていました。

お決まりの観光ルートから外れて…

ピザ発祥の地でもあるナポリ。旧市街の外れにあるピザ屋さんには、薪が焚かれた大きなナポリ窯が。店主が作ってくれたのは、リピエーノピザ。“リピエーノ”とは、イタリア語で“包む”という意味だそうです。日本ではあまり見かけない、ボリューム満点の二つ折りのピザをいただきました。再び旧市街へ戻り、細い路地を散策している途中で見つけたのは、“ヒゲの理髪店”。何でも、今ナポリでは、70年代に流行っていたヒゲブが再びブームになっているんだとか。ヒゲでオシャレを楽しむ男性が増え、とても人気が出てきているのだと言います。お決まりの観光コースでは味わうことのない、ちょっとディープなナポリにも触れることができました。

マリキャーロ

最後は、海沿いの道を走る路線バスに乗り、ナポリ湾を見に行くことに。辿り着いた先は、海辺の小さな町。“マリキャーロ”という愛の歌が歌われた窓があることで有名な場所なのだそうです。そこで出会ったのは、笑顔が素敵なおじいさん。旅の最後に、彼がその“マリキャーロ”を披露してくれました。お節介で、人懐っこくて、底抜けに明るいナポリの人々。ナポリ湾を見つめ、彼らの笑顔を思い返しながら、今回の旅を締めくくりました。