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地球バス紀行

毎週木曜21時オンエア

人間の鼓動に出会う旅、一篇の旅物語
旅の案内役は「バス」です。大陸を横断する長距離バスから都市部を毛細血管のほうに走り回る生活導線バス。早足の旅ではけっして見えて来ない車窓の風景が、乗り合わせた人との出会いが、いろいろな物語を紡ぎだしていきます。

2014年12月4日 O.A.

#188 チューリヒ発 アルプスの小国へ

スイス

地図

今回の舞台はスイス。最大の都市、チューリヒから、国境を越えアルプスの小国・リヒテンシュタインを目指します。旅の始まりから、いきなりトラブルが待ち受けていました。チューリヒの中央駅でバスストップの場所を聞いてみたところ、「バスってなんだっけ?」と言われる始末。どこを探してもバス停が見つかりません。スイスは鉄道大国。町中に路面電車が張り巡らされ、ヨーロッパ中に行ける長距離列車もたくさんあります。となると…バスは日陰の存在。道行く人に聞けば、どこへ行くにも、バスは不便だから電車で行きなと答えられます。

途方に暮れながらも、バスストップを探し求めてチューリヒ湖のほとりを歩いていると、楽しそうに昼食をとるカップルに遭遇。聞けば、この大きな湖の東の端には、“バラの町”と呼ばれる、ラッパーズヴィールという町があるのだとか。聞けば、今がちょうど満開時。中でも、有名なバラ園があって、たくさんの観光客が訪れるそうです。まずは、その町にぜひ立ち寄ってみたいと思ったものの、肝心のバスストップが見つかっていない。でも、地元の人に助けてもらって、何とか湖畔にあるバスストップに辿り着くことができました。

ところが、ここからがさらに大変。スイスのバスは距離が短く、何度も乗り換えなければ、ラッパーズヴィールには辿り着けないのです。乗客に聞いたところ、列車なら乗り換えなしで1時間もかからずに行けるとか。不毛な旅。でも、やはり、バスで行くことにしました。ようやくラッパーズヴィールに着いたのは日暮れ時。約6時間かかってしまいました。今夜は、この町で一泊して、明日の朝、バラ園へ行くことに。

翌日は晴天に恵まれ、気分も上々。昨日までの珍道中を忘れ、思いっきり楽しむことに。まずは、チューリヒ湖の湖畔で、陽気な地元の人たちと触れ合った後、この地域の名物・エグリという魚も堪能。いよいよ旅の目的地、バラ園に向かうことに。でも、ここで、またまたハプニングが発生。そのバラ園、思っていたのと、ぜ〜んぜん違ったのです。意外な結末に、今まで苦労してきたのは、何だったんだと落ち込みながらも、また、バスの旅を再開することに。

気を取り直して、旅の最終目的地、リヒテンシュタインへ向けて出発。乗り込んだのは、2階建てバス。車窓からは雄大なアルプスの山景色が広がり、ようやくバス旅を本格的に楽しめるぞと思ったのも束の間、またまた…乗り換えです。

そして何度も乗り換えを繰り返し、ようやく旅の最終目的地・リヒテンシュタインへ。その首都・ファドゥーツに到着しました。やっとの思いで辿り着いたのに、ここでも意外なハプニングが待ち受けていました。首都というものの、休日とあって、辺りは閑散。しかも、スイスと同じような店ばかりで、土産物までスイスのものばかり。はるばる国境を越えてきたはずなのに、異国情緒はゼロ。最後の最後まで、こんな珍道中が続くとは…。でも、旅の終わりに、素晴らしい景色を見ることがきました。リヒテンシュタインの公爵が今も暮らす、高台の城。その近くの展望台で、スイスとリヒテンシュタイン、2つの国が、まとめて見渡せたのです。緑豊かな小さな国と、その向こうに連なるアルプスの名峰たち。長かったバス旅の道のりが、全て一望でき、苦労が報われた気がしました。