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人間の鼓動に出会う旅、一篇の旅物語
旅の案内役は「バス」です。大陸を横断する長距離バスから都市部を毛細血管のほうに走り回る生活導線バス。早足の旅ではけっして見えて来ない車窓の風景が、乗り合わせた人との出会いが、いろいろな物語を紡ぎだしていきます。
今回の旅は中東・オマーン。古都ニズワを出発したバスは灼熱の砂漠を走って、900キロ南のサラーラを目指します。
およそ6万人の人々が暮らす内陸の町ニズワは、6世紀頃にはオマーンの首都として栄えた古都。かつては国中からイスラム教の学徒が学問を深めるために集まったことから、「イスラムの卵」とも称された歴史と文化が息づく町です。このニズワの旧市街にある1軒のお香屋さんで、古くから世界中で珍重されてきたという乳香が焚かれていました。お店の人に聞くと、乳香はかつて金と同じ価値で取引されていたと言います。その乳香の産地であるサラーラという町を目指して南へ900キロの旅をすることにしました。
ニズワからバスに乗って南へ1時間弱で、オアシスの町アダムに到着。「ファラジュ」と呼ばれる水路が縦横に引かれたナツメヤシの畑のなかを歩いていると、水路の上にしつらえられた共同の水浴び場を発見。せっかくなのでオアシスの水浴び体験をしちゃいました。
アダムからは一路南へ、サラーラ目指してバスはひた走ります。順調に走っているかに見えたバスが突然エンジントラブルに見舞われます。原因は灼熱の砂漠のなかの道を走ったことによるオーバーヒート。なんとか最寄りのハイマという町までたどり着き、そこで後から来る別のバスに乗り換えてサラーラを目指すことになりました。
オマーン南部最大の町、サラーラに到着したのは夜の9時。まずは地元の青年2人に助けてもらいながらこの夜のホテル探し。おかげで超リーズナブルできれいなお部屋を見つけることができました。翌日、いよいよ旅の目的である乳香の木を探します。町で見つけた乗り合いバスに乗ってサラーラの郊外へ。ラクダが放牧されている乾いた谷には、一面乳香の木が自生する風景が広がっていました。