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地球バス紀行

毎週火曜21時オンエア

人間の鼓動に出会う旅、一篇の旅物語
旅の案内役は「バス」です。大陸を横断する長距離バスから都市部を毛細血管のほうに走り回る生活導線バス。早足の旅ではけっして見えて来ない車窓の風景が、乗り合わせた人との出会いが、いろいろな物語を紡ぎだしていきます。

2013年9月3日 O.A.

#124 パリ発 セーヌ河畔の町巡り

フランス

地図

今回はフランス北部・ノルマンディー地方の旅。
花の都パリからセーヌ川に沿って下り、イギリス海峡に面した河口の港町を目指します。

旅の振り出しは、パリの象徴、エッフェル塔。天空の大パノラマを拝むため展望台に上ります。塔の上では、点検士のおじさんが望遠鏡の整備をしている最中でした。彼は仕事のために10年以上、毎週欠かさずこの展望台からパリの表情を眺めてきたそうです。そんな彼にアドバイスを貰い、今回のバス旅は「セーヌ川沿いを北上し魅力ある町を巡ること」に決めました。

まずはパリからルーアンにやって来ました。
異国情緒あふれる建物が並ぶ旧市街。フランス三大大聖堂のひとつ、ノートルダム大聖堂の偉容に目を奪われました。偶然出会った大学生に誘われたのが、大聖堂前の広場で開催される夜のイルミネーションのショー。夜の帳が下りた23時、たくさんの人が集まる中、満を持してショーが始まります。大聖堂の外壁をスクリーンにした大規模な光の演出。CGや映写機を使ったプロジェクションマッピングと呼ばれる最新技術です。芸術を愛する国で、予期しなかった素晴らしい時間を過ごせました。

翌朝、セーヌ川沿いのジュミエージュという町に美しい廃墟があると薦められました。その廃墟は11世紀に建てられたノートルダム教会だったそうですが、今は屋根もなく正面のファサードと壁の一部が残っているだけ。ところが、その前に立ちタブレット型の端末を廃墟にかざすと、CGで甦った建物が瞬く間にモニターに映し出されるのです。当時の壁や天井に囲まれる不思議なサイバー空間。最新技術のおかげで、つかの間のタイムスリップを体験できました。

次の町は、セーヌ川の河口ル・アーヴル。バスで乗り合わせた画家のパステルさんに海へ案内して貰いました。水平線と溶け合うように設計された低層建築が広がる街並みは、戦後、焦土から再建された都市として世界遺産に登録されているそうです。夜はパステルさんのご自宅に招かれ、ノルマンディー地方の名物シードルで乾杯。話もはずみ、ご自宅にそのまま泊めて貰いました。

旅の最終日は美しい海辺の町エトルタを尋ねます。
バスでエトルタへ向かう途中、気さくな運転手さんに招かれて、バスの車庫にお邪魔する思わぬ展開になりました。いつもお世話になっているけれど、普段はめったに見られないバスのエンジン修理やタイヤ点検、巨大な洗車機でピカピカになるバスたちを間近で見て心弾みました。

最終地、エトルタに到着するとあたりはすっかり夕暮れ時。イギリス海峡に沈む美しい夕日が、風雨にさらされてアーチ型になった断崖を赤く幻想的に染めていきました。