毎週水曜日よる9時オンエア
地球は絶景の美術館。世界にたった1つの絶景旅行ガイドをあなたに。2泊3日で行く、夢の旅にご案内いたします。(旅人:森高千里)
ルクセンブルク市は住民のおよそ7割が外国人という国際都市。公用語は、ルクセンブルク語、フランス語、ドイツ語と、誰もが最低でも3つの言語を使い分け、いまなお古い城塞を残す旧市街は世界遺産になっています。ボックの砲台と呼ばれる城塞跡からは、自然の地形を活かした要塞であることがよくわかりました。その地下には総延長17キロに渡ってトンネルが作られていました。地理的にヨーロッパの十字路にあり、戦略的に重要な場所としてスペインやスイス、オーストリア、ドイツなどが競って侵略しては城塞を強化していった歴史が。旧市街のある建物の壁には「我々は我々であり続けたい」と書かれた言葉が書かれています。それはルクセンブルク人の独立の心を表した大切な言葉でした。しかしその400年にわたる苦難の歴史で得た文化と言葉の多様性が、現在の豊かさに繋がっていました。
2日目は、ワインの名産地。レミーシュへ。ドイツとの国境を流れるモーゼル川の流域では、古代ローマ時代からワインが作られてきました。小国ゆえに、生産量こそ少ないですが、品質は高く、ドイツやフランスのワインに勝るとも劣らないと言われます。レミーシュにはカーブと呼ばれる貯蔵庫も多くあり、試飲付きの見学も可能。天然の岩盤を利用したカーブでは、クレマンと呼ばれるスパークリングワインに出会います。フランスのシャンパーニュ地方で作られたものしかシャンパンを名乗れませんが、このクレマンは全く同じ製法で、シャンパンに引けをとらない味、そしてとてもリーズナブルでした。そして午後からは、クルーズ船に乗ってフランスとドイツと国境を接する街・シェンゲンへ。ここはヨーロッパの26か国で、原則、検査なしで国境を超えることができるシェンゲン協定が生まれた街。それまで国と国を隔てていた柵や壁が取り払われ、人が自由に行き来できるようになったのです。川沿いの広場には協定に加盟する26カ国の国旗が掲げられ、多くの人が訪れていました。
旅の最終日に向かったのは、山あいの小さな街、フィアンデン。そこには国一番の名城、フィアンデン城があります。標高400メートルほど山の上に建てられた城はローマ時代、すでに砦があったといいます。ヨーロッパの十字路で、税金を取り立てる関所としての役目も負っていたのです。この城を深く愛したのが19世紀のフランスの文豪、ヴィクトル・ユーゴー。城をのぞむ家の窓辺でインスピレーションをえて数多くの創作を行なったと言われています。城内には中世の騎士たちが当時使用していた武器が防具が置かれていて、まるで歴史映画の世界。ルクセンブルク大公が大切な国賓をもてなす時は、この城に必ず招くそう。日本の天皇皇后両陛下も2度も訪れていました。第2次世界大戦の時、ナチスドイツから一番最後に解放された街であり、国民にとってやっと独立を取り戻したという象徴的で思い入れのある街。最後に城が真正面に見える丘の上へ。
ヨーロッパの十字路で、常に、自分自身であろうとし続けた、ルクセンブルク。山の上に堂々と建つ、堅固(けんご)な古城の姿に、この国の強さを見た気がしました。