毎週水曜日よる9時オンエア
地球は絶景の美術館。世界にたった1つの絶景旅行ガイドをあなたに。2泊3日で行く、夢の旅にご案内いたします。(旅人:森高千里)
チワワ鉄道は、港町・ロスモチスを起点に、メキシコ最北端のチワワ州、チワワまで全長635キロを走る、メキシコでは最も有名な鉄道。旅のスタート地点・ロスモチスでまず訪ねたのは、小さな漁師町です。まるで地中海の島のような、風情ある古い港で、陽気な漁師たちが船に乗らないかと声をかけてくれました。美しい湾を船で走っていると、後ろをついてくる大きな魚の群れが…。なんとイルカ。何十頭ものイルカたちが船のすぐそばまで近寄ってきます。あまりの可愛らしさに見とれてしまいました。
そして、このあったかい人情の港町からチワワ鉄道の旅へ出発します。夜も更けぬ真っ暗なホームに大勢の乗客が集まります。ゆっくり、ゆっくり走り出したチワワ鉄道。次第に太陽が顔を出します。最高の朝日を独り占めです。
ロスモチスの駅を夜明け前に発車し、やがて朝日を浴びた列車は、海抜0メートルの街から、峻険な山々を縫うように登っていきます。お昼過ぎには、2000メートル以上の高地へ。広大な渓谷が車窓いっぱいに広がります。車内で陽気にみんなで歌を歌っていたメキシコ人観光客や、外国人観光客から、ため息、歓声も上がります。ディビサデロという駅で途中下車。にぎわう駅を抜けるとすぐに見渡す限りの大峡谷、コッパー・キャニオンが広がります。その雄大さには言葉がありません。現地のガイドさんに導かれ、展望台、川、谷、様々な角度からこの大パノラマを体感。圧巻は、垂直に切り立った崖の間を通り抜けるロープウェイ。岩肌むき出しの断崖が、眼前に迫ってきて、足が震えました。
この大峡谷の崖には、今も多くの山岳民族が暮らしています。原色の派手な民族衣装をまとった、彼らタラウマラ族は、何百年も前からほとんど、質素な生活スタイルを変えません。スペインの支配から逃れるためにこの峡谷に移り住んだ先住民族の末裔も多いとか。行く先々で様々なタラウマラ族の人々に出会いました。いまだに洞窟の中に暮らす人、村の祭りで奏でる、手作りのバイオリンを弾いてくれた老夫婦。村の小学校では、素朴な子供たちとも触れ合いました。2000メートル以上の大峡谷のなかで、厳しい自然と向き合いながら、それでも楽しく暮らすタラウマラ族の人々の笑顔。そして窓の外に広がる絶景に感動しっぱなしで、終着駅、チワワ犬の故郷、チワワにたどり着いたのです。