毎週水曜日よる9時オンエア
地球は絶景の美術館。世界にたった1つの絶景旅行ガイドをあなたに。2泊3日で行く、夢の旅にご案内いたします。(旅人:森高千里)
旅の始まりは、ペルー南東部・クスコ。マチュピチュ観光の拠点であり、世界遺産の古い町並みで有名です。クスコとは先住民族の言葉で、「へそ」の意。15〜16世紀に栄華を誇ったインカ帝国の首都がここクスコにあったことから、そう呼ばれたそうです。赤レンガの屋根に、石畳の細い路地。街を歩けば、石組みの歴史的建造物が延々と続いています。美しい女性警官に最も有名な見どころを聞いたところ「12角の石」だそう。当時のインカの技術の高さを物語る、12の角を持つ巨大な石組み。カミソリの歯すら通さないと言われる精密な石組みにびっくり。そして街のシンボル・アルマス広場へ。ここは16世紀にスペイン人が建設した美しいカテドラルで有名。噴水前で絵を描き売っていた男性としばし立ち話。彼はマチュピチュに魅了され、ここで描いて観光客に売っているのだそう。ほとんどが霧に包まれたマチュピチュの絵。彼自身、霧の中から突如現れるマチュピチュの光景が、神秘的で、今でも脳裏に焼き付いて離れないそうです。今は雨季なので、数日いればもしかしたら見られるかもしれない聞き、霧のマチュピチュを求め、早速、出発です・・・!
列車とバスを乗り継ぎ、3時間半。垂直に切り立った高い山に囲まれたジャングルの奥地に、マチュピチュは突如現れます。標高2400mの山の尾根に佇むその迫力に感動していると、ガイドさんから、この風景には、インカの人々の様々な思いが隠されていると教えられました。例えば、入口の門は、聖なる山をきちんと額縁に納めたようなサイズで作られているし。祈りの神殿は、大きな石を並べて、神の使いであるコンドルを模しています。シンボルと言うべき聖なる山ワイナピチュの頂上から見えたのは、マチュピチュの全景。しかしそれはただの風景では なく、上から見るとまたもコンドルの形をしていて驚きました。インカ人にとってマチュピチュは生活の場である前に、聖なる祈りの神殿だったのです。そしてもう一つ、驚いたのは美しい蘭の花。ここは遺跡だけでなく、400種類を超す蘭が自生していることでも有名なんだそうです。遺跡のあちこちに色とりどりの蘭の花が輝いています。この蘭の楽園が生まれたのは、マチュピチュの霧。複雑な地形が、特有の霧を発生させその水分が蘭の楽園に育てたのだとか。
翌朝、5時。まだ暗いうちから霧のマチュピチュを見ようと、再び遺跡へ。しかし、あいにくの雨。真っ白な霧で何も見えません。三日目の今日も無理かと諦めかけたその時、ガイドさんが呟きます。「やっと霧のマチュピチュが見られますね」。その言葉を信じ、待ち続けること1時間。厚い雲の切れ目からわずかに太陽が見え始め、一気に霧が動き出しました。まるで生き物のように動く霧、朝日を浴び目まぐるしく変化するマチュピチュの色。それはまさに、クスコで見たあの絵のような、霧を纏い天に浮かびあがる天空のマチュピチュでした。
そして、あっという間に霧は晴れ、何事もなかったかのように普段のマチュピチュの風景に。早朝の、わずかな時間だけに見られるこの絶景。圧倒的な神秘の美しさに触れ、私は思いました。この霧の風景もまた、インカの人々が計算してつくり出した、芸術品なのではないかと。