「地球絶景紀行」世界にたった1つの絶景を探す、大人の紀行ドキュメンタリー

毎週水曜日よる9時オンエア

地球は絶景の美術館。世界にたった1つの絶景旅行ガイドをあなたに。2泊3日で行く、夢の旅にご案内いたします。(旅人:森高千里)

#28 アドリア海の真珠 ドゥブロヴニク(クロアチア) 2010/10/22 O.A.

花の街・サグレブ

クロアチアの絶景をめぐる旅。まず最初に訪れたのは、首都ザグレブです。人口100万の大都市には、街のあちこちに緑が溢れています。木漏れ日が燦々と降りそそぐ遊歩道や色取り取りの花が咲く公園、赤いパラソルの屋台が軒を連ねる伝統の花市など、のどかな街並みに心が安らぎます。
のんびりと街を歩いていると、小高い丘の斜面に可愛い乗り物を発見しました。クロアチア語で『ウスピニャチャ』。青色の小さなケーブルカーです。丘の上にはザグレブの名物があると聞いて、さっそくウスピニャチャに乗車します。丘を登ると目の前に高い塔が聳えていました。塔の最上階の窓から覗く黒い筒のようなモノが名物『グリチの大砲』です。この大砲から毎日正午キッカリに空砲が撃たれ、市内中の教会に時刻を知らせるのです。するとその合図で教会は一斉に正午の鐘を鳴らします。1877年から続くザグレブの名物です。古都ザグレブに響き渡る教会の鐘…。まるで空から鐘の音が降っているみたいで、素敵な光景でした。

要塞都市・ドゥブロヴニク

「アドリア海の真珠」の呼び名を持つ絶景の町、ドゥブロヴニクにやって来ました。ここは周囲2キロを堅固な城壁に囲まれた要塞都市です。海上交易で栄えた16世紀頃に町は完成。石造りの白い町並みとオレンジ色の瓦屋根がトレードマークです。しかし、家々の壁に残るのは無数の修復の跡。20年程前、クロアチアは旧ユーゴスラビアからの独立を巡り、激しい内戦に揺れました。ドゥブロヴニクも攻撃を受け、町の8割が焼けてしまったのだそうです。戦後、人々は力を合わせ、町を再建。かつての町並みが奇跡的に甦りました。
スルジ山の展望台からは、紺碧のアドリア海と降り注ぐ陽光のもと、まるで宝石のように光り輝くドゥブロヴニクの町並みが一望できました。でも、よく見ると古い建物はごくわずか。新しい瓦屋根が、かえって内戦の痛手の大きさを物語っていました。美しさの陰に悲しみを秘めるドゥブロヴニクの絶景です。

セピアの光を放つ夜の旧市街

ドゥブロヴニクの町中を散策していると、ここに暮らす人々とのいくつもの素敵な出会いがありました。町で唯一の音楽学校に通い演奏家を目指す少年。狭い路地を走り回りドッジボールを楽しむ子供たち。お年寄りから教わった薬草入りクリームを販売する3人組。内戦で痛めた足のリハビリのために、毎日アドリア海で泳ぐ陽気なおじさん…。出会った全ての人の、穏やかで優しい笑顔がとても印象的でした。
夜、満月に誘われ散歩に出かけてみると、そこには、昼間とは全く違う不思議な気配があたりを満たします。ライトアップされセピアの光を放ち、闇に浮かぶ静かな町並み。まるで遠い中世の夢に迷い込んだような幻想の世界が広がっていました