毎週水曜日よる9時オンエア
地球は絶景の美術館。世界にたった1つの絶景旅行ガイドをあなたに。2泊3日で行く、夢の旅にご案内いたします。(旅人:森高千里)
日本からアルゼンチンの首都・ブエノスアイレスを経由しておよそ30時間、エル・カラファテ国際空港に到着しました。空港ロビーは観光客でいっぱい。ここは世界遺産ロス・グラシアレス国立公園への玄関口にもなっていることから、世界中からたくさんの人が訪れるそうです。空港を出たところで、ガイドさんと待ち合わせ。こんなにたくさんの人の中から見つけられるかな、と不安に思っていると…、モヒカンヘアーの男性が、満面の笑みを浮かべこちらに手を振っています。「ようこそパタゴニアへ!」…彼こそ、ガイドのファブリシオさん。何ともユニークなヘアースタイルのガイドさんとともに、まずはカラファテの街のメインストリートへ。車窓からは白銀の山々に囲まれた大自然が広がっています。これは絶景にも期待できそうです。街を散策中、地元の人がこの街はアイスクリームが有名だと教えてくれました。さっそく私も最も有名な店を訪ねました。おすすめは、街の名前の由来にもなった「カラファテの実」を使ったアイスクリーム。そして店長さんから、「カラファテの実を食べた旅人は、必ずまたこの地へ戻ってくるという言い伝えがあるんだよ」と、とても素敵な話を教えていただきました。
ロス・グラシアレス国立公園の中でも1番有名だというのが、全長約35kmにも及ぶペリト・モレノ氷河。何万年も前から、絶えず成長と崩落を繰り返し、別名「生きた氷河」と呼ばれているそうです。この氷河を楽しむには、展望台から見るだけでなく、船で氷河をいくとも回るクルージングツアーや、氷河を自分の足で氷河を歩くトレッキングツアーなど、様々な楽しみ方があります。まずは、氷河を間近で見たくてトレッキングツアーに参加。目の前に迫る、高さ60mの巨大な氷河に圧倒されました。このトレッキングツアーでは、滑らないように「アイゼン」というスパイクのような金具を靴に巻き付けます。「一度滑ると下に落ちるまで止まらないよ」とツアーのガイドさんに言われ、アイゼンを氷河に踏み刺すようにして必死に歩きます。普段とは違う筋肉を使うので、少し歩き疲れてきました。しかし、360度どこを見回しても氷河。何万年も前から変わらぬ大自然に包まれている感覚が、疲れを全て吹き飛ばします。トレッキングの最後には、なんと氷河の氷が入ったウイスキー・オン・ザ・ロックが配られ…氷河の上で飲むウイスキーは格別でした。
「氷河もいいけど、パタゴニアに来たならフィッツロイも見ないとね!」地元の女の子にそう言われ、カラファテから車で約3時間、旅人の間では有名な山、フィッツロイのあるエル・チャルテンという街を目指します。フィッツロイは断崖絶壁の巨大な山。世界中の山好きの人々の憧れの地です。しかし、このフイッツロイ、問題があります。年間300日ほどは雲に覆われており、その姿を見るのはごく稀。昔の先住民族は、あまりに雲がなくならないので山が煙を吐いているものだと思い込み、フィッツロイを火山だと勘違いしていたほどだそうです。「運が良ければ見れるかもね」と登山ガイドのペドロさんに言われ、期待に胸を膨らませつつ早朝5時に展望ポイントへの登山スタート。まだ日の出ぬ暗闇の中をひたすら2時間登り続けます。夜明けとともにポイントに到着。さて、まぼろしの山、フィッツロイは…。やっぱり雲の中。巨大な奇岩を覆うように巻き付く雲を祈るような気持ちで見守っていると、突然、雲の切れ目からフィッツロイが姿を現しました…。ガイドさんが私に叫びます。「なんて運のいい人だ!」紅葉の中、ついに全身を現したフィッツロイの、その圧倒的な存在感に心を奪われました。