毎週水曜日よる9時オンエア
地球は絶景の美術館。世界にたった1つの絶景旅行ガイドをあなたに。2泊3日で行く、夢の旅にご案内いたします。(旅人:森高千里)
今回はヨーロッパの中心に位置するベルギーが舞台。その南部にある美しい街をめぐります。まずやってきたのは首都ブリュッセル。この街で一番の人気観光スポットと言えば、グラン・プラス広場。500年以上の歴史を持つ建物が四方をぐるりと囲み、中心に立つとその迫力に圧倒されます。街を歩いていると気づいたことがありました。それは、車が1台も走っておらず自転車や通行人が自由に車道を行き交っているのです。実はこの日は、年に1度の「ノーカーデー」つまり市内を車が走ってはいけない日なんだそうです。エンジンの音がしない石畳の街を歩いていると、とても静かでまるで中世の時代にタイムスリップしたかのようです。普段は掻き消されてしまっている鳥のさえずりや風に葉が揺れる音を、ゆっくりと味わいながら歩くことができました。 この日の夕方、ガイドと待ち合わせをして向かったのは、ブリュッセルから車で南へ30分のところにあるワーテルロー。ここはおよそ200年前にナポレオン軍が敗れた戦地だったそうです。今ではそれが信じられないほど、のどかな田園風景が広がっています。そして戦争の記念碑として建てられたライオンの丘に沈む真っ赤な夕日は、平和を象徴するかのような風景でした。
次に訪れた街は、ワーテルローからさらに南にあるディナン。ここはサックスが発明された音楽の街としても知られ、町の至る所に音楽にちなんだオブジェや博物館があります。さらにディナンの郊外にあるアン・シュール・レッスという鍾乳洞では、自然と人間が融合して奏でられるコンサートが開かれるといいます。何万年という歳月をかけて生まれた鍾乳洞はとても静かで自然の息吹が感じられるようです。最後にやってきた部屋は、手つかずの自然でできたコンサートホール。フルートの演奏が始まりました。時にゆるやかに、時に激しく、その音色に合わせて鍾乳洞が最高の響きを返してきます。まるで奏者と洞窟が会話をしているかのようです。心にじんわりと染み込んでくるフルートの響き。全てが洗い流されたような清々しい気持ちになりました。
最後の町は、デュルビュイ。ここは世界一小さな町とも呼ばれるほどの、可愛らしい箱庭のような町です。石畳に石の壁、車も通れないほどの小さな道や読書をしている少年の銅像、軒先には色とりどりの花が咲き、まるで絵本の中の世界に入り込んだかのようです。それに小さな町では同じ人にも何度も会います。印象的だったのは、町に住んでいる人も観光客も、レストランで働いている人も、みんな笑顔だったということ。きっとこのメルヘンチックな雰囲気が、自然と人を笑顔に変えてしまうんでしょうね。 夕暮れ時、町が見渡せる展望台へ上がりました。夕日に照らされた世界一小さな町。うっとりと眺めていると、突然雨が降ってきました。天気雨です。そして5分後、今度は奇跡が起こりました。降りしきる雨の中、デュルビュイの町に虹がかかったのです。夕日の赤と木々の緑、そして空と水の青を映し出した虹。まるでベルギーの自然が、この旅を祝福してくれるかのような、最高のフィナーレになりました。