9月27日よりヨルダン・アンマンにて「FIBA女子アジアカップ2021」が開幕する。
日本は、東京オリンピックで銀メダルを獲得したメンバー5名に加え、3x3日本代表として地元オリンピックで奮闘した3名などが代表候補に名を連ね、若手を中心としたメンバー編成でアジアの争いに臨む。
その若きチームをキャプテンとしてけん引するのが今回の日本代表では最年長となる林咲希(ENEOSサンフラワーズ)。
東京オリンピックでは、準優勝に大きく貢献したシューターで、予選リーグのナイジェリア戦では7本の3ポイントシュートを沈めると、準々決勝のベルギー戦では残り15.2秒、決勝弾となる3ポイントシュートを決めて初の準決勝進出に導いた。
「最初はどんな声掛けをすればいいのかわからなかったのですが、言葉よりも“姿勢”を見せていけば付いてきてくれるのではないかと思い、人一倍頑張ることを意識しています」と、林はキャプテンに就任にしてからの思いを語る。
4連覇を達成した前回大会にも出場しているが、「2年前は付いていくだけというか、周りに引っ張ってもらっていました」と林。それだけに「今大会は引っ張る立場として、どんな相手にも強気なプレーなどを出していかないと」と意気込んでいる。
恩塚亨ヘッドコーチの目指すスタイルは、全員の共通理解のもと、チャンスがあれば誰もが果敢にシュートを狙うこと。そのため、「3ポイントシュートだけでなくドライブも行っていいと言われています」と、林自身も外角シュートだけでなく、ドライブなどからも得点を奪う構えだ。もともとはミドルシュートやドライブなど、得点能力の高い選手。アジアカップでは、オリンピックとはまた違った林の持ち味が見られることになりそうだ。
「世界のいろんな選手と戦ってきた強みはあるので、銀メダルを取ったという強い思いと使命感を持って戦わなければいけないと思っています」と林は気を引き締める。
あくまでも「挑戦者」と語気を強める新リーダーがチームを高みへと押し上げる。
女子日本代表が銀メダルを獲得した東京オリンピックにおいて、大きく飛躍したのが赤穂ひまわり(デンソーアイリス)だ。
185センチという高さに加えて抜群の跳躍力を持ち、日本代表ではスモールフォワードを担う。豪快なリバウンドやブロックショットはまさに世界レベルといっていいだろう。加えて、オリンピックでは豪快なドライブからのシュートなど、苦しい場面で得点などで日本の快進撃に一役買った。
その赤穂にとって2回目となるアジアカップ。2年前は「先輩たちについていくだけだった」と本人は振り返るが、その後、幾多の国際大会を経て経験を重ねてきた。それだけに、「代表経験だけをみると、私は結構上の方だと思うので、これまでの先輩方が見せてくれていたようなリーダーシップを少しでも取れるように」と意気込む。特に今回のアジアカップに臨むメンバーは若手選手が多いだけに、オリンピックでいくつもの修羅場をくぐってきた23歳は、その経験をアジアカップでいかんなく発揮しようと考えているのだ。
前任のトム・ホーバスヘッドコーチとはスタイルが異なる中、「恩塚亨ヘッドコーチからは、チャンスがあったら攻めるようにと言われているので、そこを意識しながら取り組んでいます」と赤穂。「自分自身がチャンスだと思っていなかったところにもチャンスがあったと教えもらい、その時の映像も見返しながら、どこがチャンスだったのかなど徐々に分かってきました」と、練習の中で手応えも感じているよう。もともとオールラウンドな動きを得意としているだけに、アジアカップでは様々な得点パターンから日本の攻撃をけん引する姿が見られそうだ。
5連覇に向けては「(4連覇は)今までの先輩方が築き上げたものだと思うので、そこをつないでいきたいという気持ちはあります」と決意を新たにする。「オリンピックとは違う日本のバスケットが見せられると思うし、夢を与えられるようなプレーをしたいです」としっかりとした口調で語った赤穂のスケールの大きいプレーに注目だ。
所属するENEOSサンフラワーズではスターターを担う宮崎早織。昨シーズンの皇后杯では大会途中に大黒柱の渡嘉敷来夢が大ケガを負ったが、そのアクシデントにも負けず、自らが積極的に得点にからみ優勝に貢献した。続くWリーグでも準優勝となり、『プレーオフ・ベスト5』とレギュラーシーズンの『ベスト5・ガード部門』とのダブル受賞を果たした。
今夏の東京オリンピックでは、バックアップとして大舞台を経験。抜群のスピードを持つ女子バスケット界屈指のスピードスターは、アジアカップに向けて「オリンピックの時と変わらずスピードは生かしていきたいです。でも、最初は自分自身のスピードを武器にリングに向かって行くけれど、無理な時にはセットを組んでオフェンスをしていくこともこれまでと変わらずやっていきたいです」と語る。
東京オリンピックの時と変わり、今のチームは「コート上の選手たちがどんどんと答えを見つけていくスタイルなので、慣れるまでは判断に迷いがありました」と活動当初は新しいプレースタイルに戸惑いがあったというが、今は「合宿をするにつれて判断も良くなっているし、みんながどんなことをやりたいのか、チーム全員がわかってきています。個人的にはいろんな種類の攻め方があるので、やりがいがあり、楽しくやらせてもらっています」と笑顔を見せる。
アジアカップでは主軸のガードとしての活躍が期待されており、宮崎自身も「今までと違い、ガード陣の中で一番年上になるので、しっかりしていかないと」と気を引き締め直す。これまで日本代表ではムードメーカーの一面もあったが、「年下の選手たちがいつも元気でいてくれるので、私は冷静にいられるように」とも心境を語った。
オリンピックとは立場が変わり、これまで以上の責任を背負っての戦いとなるが、持ち前の明るさと強気のプレーでそのプレッシャーをも跳ね除けるのが宮崎。日本の司令塔が見据える先はアジア制覇のみだ。
182センチで体の強さに定評のあるオコエ桃仁花(富士通レッドウェーブ)は柔らかい動きを見せる万能選手。今夏は東京オリンピックのメンバーにも名を連ね準優勝を経験した。そのオリンピックでは、大事な場面で3ポイントシュートを沈め、また相手の大型選手に対して身体を張ったディフェンスで奮闘。自らの役割を全うした。
「東京オリンピックを戦い、3ポイントシュートが自分自身の強みになると分かりました。でもそれは、アジアカップではアジャストされると思うし、今のチームではドライブも求められているので、3ポイントシュートをチェックされてもドライブに強くいきたいと思っています」とオコエはアジアカップに向けての取り組みを語る。
9月の頭には日本代表として参加したWリーグ開催の『オータムカップ2021』でスターターを務めるなど、アジアカップでは主軸としての働きが期待される。それは本人も自覚しているところで、「東京オリンピックではサブメンバーで、(試合では)つなぐ役割でしたが、今はスタートとして、オリンピックで見てきたこと、感じたことを表現する立場になりました」と言う。
その言葉通り、オータムカップでは(シャンソン化粧品シャンソンVマジック戦)、3ポイントシュート4本を含む13得点を挙げ、大きな存在感を放った。
「今求められていることはこれからのバスケット人生においてすごく大事なことなので、アジアカップで自分のスタイルをもっと確立していきたいです」と決意を新たにするオコエ。
自身初となるアジアカップ。「楽しみです」と目を輝かせながらも「(オリンピックの)銀メダルというプライドもありますし、今まで4連覇という素晴らしい歴史を作ってきたプライドを受け継いだと思います。それを自信につなげて、日本の強みであるチームワークを出していきたいです」と力強く発する。
オリンピックを経て自覚と責任が増したパワーフォワードは、チームをアジアの頂点へと導く働きを見せてくれるに違いない。
シューティングガードの東藤なな子(トヨタ紡織サンシャインラビッツ)は、チーム最年少で東京オリンピックに出場。同大会ではディフェンスを買われ、執拗なマークで相手エースを抑える働きを見せた。また、オフェンスでも隙あらば果敢にドライブを仕掛けるなど、攻防において積極的なプレーを披露。それと同時に、コート上では20歳とは思えないほど落ち着いた様子で的確に役割をこなした。
一方で、ディフェンスのイメージが強い東藤も、所属するトヨタ紡織ではスコアラーとして君臨する。1年目のシーズンでは新型コロナウイルス感染症の影響で、シーズン途中でリーグが中断となったものの、16試合すべてでスタメン出場。得点面での貢献が大きく、文句なしでルーキー オブ ザ イヤーを獲得した。
ドライブや3ポイントシュート、時にはペイントエリア内でステップを駆使してのシュートなど攻撃パターンは豊富。2年目となった昨シーズンはレギュラーシーズン1試合平均得点で12.84点をマークした。また、自らの得点だけでなく、パスなどにも長けており、さらにはディフェンスはもちろんのこと、リバウンドにも積極的に絡み、絶対的エースとしてチームを引っ張っている。
オリンピックに続いてアジアカップでも代表入りを果たした東藤。「恩塚(亨)ヘッドコーチのバスケットはカウンター1対1を狙うバスケットなので、得意とする1対1を積極的に出していきたいと思います」と語り、加えて「自分たちでクリエイトして、シュートまで持っていくスタイルなので、そこでの課題もありますが、いろんな選択肢が増えるので、自分のやりたいプレーもできるようになったと思います」ともコメントした。
「オリンピックでディフェンスの経験を培うことができたので、そのディフェンスは出していきたいし、1対1も含め、プレーの幅を広げていきたいです」と、オリンピックで自信を深めたディフェンスと得意とする1対1をひっさげ、チーム最年少がアジアの戦いに挑む。
「恩塚ヘッドコーチのバスケットは選手全員がしっかりと共通理解をして、動きもタイミングを合わせないといけないのですが、練習でのコミュニケーションが増え、だいぶ動きも良くなり、磨きのかかった良いバスケットになっています」
「FIBA アジアカップ 2021」に向けた代表合宿をこう振り返ったのは西岡里紗(三菱電機コアラーズ)。186センチの高さと体の強さを持つセンターだ。
西岡は3x3女子日本代表として東京オリンピックに参戦。主にインサイドで体を張り、ポストプレーやリバウンド、ビッグマンへのディフェンスなど、献身的なプレーでチームを支えた。
三菱電機でもインサイドプレーヤーとして経験を重ねるが、それだけでなく、状況に合わせて中長距離のシュートも放つなど攻撃エリアは広い。
3x3の活動の中で「武器になったのが3ポイントシュートを打てるようになったこと」と言うように、3ポイントシュートの精度も上がっており、「インサイドもアウトサイドもできたらディフェンスは絞れないと思うので、もっとチャレンジしていきたいです」と声を弾ませる。
さらに、それまでは得意ではなかったこともあり、3ポイントラインより外の動きには躊躇していたようだが、恩塚ヘッドコーチが求める5人が連動するプレーの中で、「(3ポイントラインの外に)動くことによってスペースが生まれ、味方が攻めてくれるようになる。自分の行動によってチームの動きが良くなることを実感できたので、どんどん身につけていきたいです」と言う。
また、3x3を通して世界クラスの当たり強さも体感。今回のチームでは「スクリーンなどでズレを作ってプレーを構成していくことが自分の強みになります」と意気込んでいる。
「高さが日本の弱点であることは3x3も5人制も変わらないので、そこは私が貢献できるところだと思っています」と発する言葉には頼もしささえ感じさせる。
オリンピックで得た収穫と課題を糧に、西岡は新たな挑戦の場へと向かう。
昨シーズン、トヨタ自動車アンテロープスの一員としてWリーグ初優勝を遂げた馬瓜ステファニー。いつも明るい笑顔を振りまいているが、一度コートに立てば引き締まった顔つきを見せる。そんなオンとオフがハッキリしているのも彼女の特長だろう。
馬瓜は中学、高校と日本一を経験。アンダーカテゴリーの日本代表にも名を連ね、10代の頃からキャリアを重ねてきた。長い腕を生かしたドライブやリバウンドなどマルチな動きを見せるユーティリティープレーヤーで、馬瓜がバスケットカウントを決めれば、チームは一気に盛り上がるムードメーカーでもある。
姉・エブリンとともに所属するトヨタ自動車ではバックアップとして出場するが、タイムシェアをして戦うチームにおいては欠かせない選手。Wリーグでは2シーズン連続で『ベスト6thマン』を受賞していることがそれを証明しているといえるだろう。
今夏は東京オリンピックに3x3女子日本代表として出場。攻防においてタフに戦い、メダル獲得こそならなかったが5位と健闘した。
「オリンピックでは最後に負けてしまい(準々決勝敗退)、本当に負けることの悔しさを感じました。やっぱり『負けない』ということが大事だと思います」と馬瓜。夏の悔しさを糧に「FIBA アジアカップ2021」へと参戦する。
その日本代表として出場したWリーグの「オータムカップ2021」ではスターターを務め、現在は主力としてチームを引っ張る立場にある。
「相手のサイズに関係なくリングにアタックしていくのが強みというか、私がやらないといけないことなので、そこは積極的に行けるようにしたいです」と自身の役割もしっかりと把握しており、5連覇に向けて気持ちを新たにした。
「アジアカップでは5連覇を狙っているので、チーム一丸となって戦っていけるように。個人としては世界の相手と戦うことのできる数少ない機会なので、自分が成長できる、皆さんに応援していただけるようなプレーをしていきたいです」
ミニバス、中学、高校と各カテゴリーで全国優勝を達成。中でも桜花学園高校時代は1年生の頃からスターターを務めるなど、山本麻衣(トヨタ自動車アンテロープス)は、常に世代のトップを走ってきた。
桜花学園高校卒業後はトヨタ自動車に進み、3年目となった昨シーズンはWリーグ初優勝も経験。その山本の能力がいかんなく発揮されたのが3x3で、女子日本代表として幾多の国際大会に出場している。特に2019年に開催された「FIBA 3×3 U23 ワールドカップ 2019」では優勝。これは5人制、3人制の男女全カテゴリーで日本史上初の世界大会優勝という快挙で、同大会では山本自身、大会MVPを獲得する活躍を見せた。
そして今夏は3x3女子日本代表として東京オリンピックに出場(結果は5位)。強気のドライブや外角シュート、さらにはガードとして常に声を出し、チームをまとめた。
「3x3ではコミュニケーションがとても大事で、私自身も率先してコミュニケーションを取るようにしていました。それはは5人制でも同じことで、ガードがしっかりコミュニケーションを取って、スムーズにプレーできるように声をかけていきたいです」と山本は、「FIBA アジアカップ2021」に向けて意気込みを語る。
現在は「恩塚(亨)ヘッドコーチのバスケットはガードがボールを持つ回数が多いので、チームの流れが悪くならないように判断をもっと早くできるようにしたいと思っています」と、新指揮官のもと、チームスタイルに順応しようと奮闘している最中だ。
高さのハンデをものともせず、スピードと上手さで相手をいなしてねじ込むドライブや勝負強いシュートを持ち合わせる山本。「コートの中を走り回ってみんなを動かす機動力になれたら。3x3と同じく、『小さくてもできる』ということを5人制でも証明したいです」と力を込める。
高校2先生の時に出場した「FIBA アジア U-18女子選手権大会」以来となる5人制の日本代表としての国際大会。アジアカップでは若きポイントカードのさらなる飛躍に期待がかかる。
「バスケットの楽しさをプレーで表現できるように頑張りたいです」
9月27日よりヨルダンにて開催される「FIBA 女子アジアカップ2019」に向けて抱負を語ったのは三菱電機コアラーズの根本葉瑠乃。三菱電機では不動のスターターとして活躍し、外角シュートを持ち味とするシューティングガードだ。
昨シーズンのWリーグでは1平均得点13.3得点(レギュラーシーズン)をマーク。チームの中でも貴重な得点源で、シュートだけでなく、パスやディフェンス、そして積極的なリバウンドとあらゆる面で勝利に貢献している。加えてルーズボールなど献身的なプレーでも盛り立てるチームの“顔”。その実力から、東京オリンピック向けた日本代表候補にも名を連ねた。最終的にはケガの影響もあり、地元オリンピックでの出場はかなわなかったが、これまでも幾度となく日本代表候補入りを果たしている。
アジアカップに臨むチームでは、キャプテンの林咲希(ENEOSサンフラワーズ)に続いて上から2番目の年齢。それを踏まえて「自分自身、あまり『言う』タイプの人間ではないのですが、チームの雰囲気が悪い時など、大事な場面での声出したいし、味方を鼓舞するような声も出し続けていきたいと思ってます」と言う。
日本代表では3ポイントシュートを求められているが、「強みである3ポイントシュートはもちろん、3ポイントシュートが打てなかった時のドライブなども恩塚(亨)ヘッドコーチからは評価をしてもらっているので、ドライブも頭に入れながら、3ポイントシュートを打ち続けていきたいです」と語る。
ボールキャッチからシュートを放つまでの一連の動きがお手本のような根本。きれいなシュートフォームから放たれる3ポイントシュートは必見だ。
5連覇について「プレッシャーを感じる」と言いつつも、根本は「バスケットはチーム競技なので、チームとしての動きを見ながら『楽しいな』とか『ワクワク』するなというプレーを届けられたらいいなと思います」と意気込んでいる。
トヨタ自動車アンテロープス所属の永田萌絵は、ルーキイヤーとなった昨シーズン、実力派の選手がそろうチームの中で一試合平均13.95分の出場を獲得。一シーズンを通してアグレッシブなプレーを見せた。
トヨタ自動車ではスモールフォワードだが、「FIBA 女子アジアカップ2021」ではシューティングガードを兼任しながらポイントカードを務める。「ガードとしてゲームをコントロールするというところにはまだ少し課題があります」とは言うものの、174センチのポイントカードは、相手の大型チームにも引けを取らない高さとなる。
「そこは私も強みだと思っていて、この身長でガードできたら中国のようなセンター陣にサイズがある相手でも、(ガードのところで)簡単にパスを入れさせないように相手を嫌がらせることができると考えています」(永田)
その永田にとって新たに女子日本代表の指揮を執る恩塚亨ヘッドコーチは東京医療保健大学のヘッドコーチでもあるため、恩師にあたる。「また一緒に同じチームで、それも日本代表としてできることは光栄なことです。(恩塚ヘッドコーチが)話していることは大学の頃とほとんど変わらないので、私がチームの中でもすぐに理解し、コートで表現できる存在になれたらと思います」と永田。
日本代表合宿を通して手応えを感じているのはディフェンスで、「ベンチから出ることが多いと思いますが、コートに入った時に、すぐ相手にプレッシャーをかけてリズムを崩すことはできていると思います」と語る。
高い身体能力を持ち、大学時代から3x3女子日本代表として国際大会にも出場。東京オリンピックでも代表候補として出場を目指したが、最終メンバーの4人に残ることはできなかった。それだけに、アジアカップでは、「東京オリンピックに出ることが目標だったのですごく悔しい思いはしたのですが、今回のアジアカップが(3年後の)パリ・オリンピックにも繋がると思って必死に頑張りたいです」と並々ならぬ思いで臨む。
昨年12月の「第87回皇后杯」ではENEOSサンフラワーズが8連覇を達成。この大会では準々決勝の富士通レッドウェーブ戦で渡嘉来夢が膝のじん帯断裂という大ケガを負うアクシデントに見舞われ、その後の準決勝、決勝と不出場となった。だが、エースの代わりに準決勝からスターターとして奮闘したのが当時ルーキーの中田珠未だ。デンソーアイリスとの準決勝で20得点、トヨタ自動車アンテロープスとの決勝でも15得点を挙げる活躍。それだけでなく、肉弾戦となるペイントエリアでの攻防でも体を張り、劇的な優勝に大きく貢献した。
「得意なプレーはスピードのミスマッチを上手く使うところ」と本人が言うように、中田は183センチながらスピードあるドライブなどが持ち味。明星学園高校時代からポテンシャルの高さは注目されており、進学した早稲田大学でも下級生の頃から主力を務めた。そして前回大会の「FIBA 女子アジアカップ2019」では、一度メンバー入りを逃したものの、大会直前に他選手のケガによる離脱のため、追加招集。唯一の大学生プレーヤーとして大会4連覇を経験した。
「スラッシャーとしてドライブでフィニッシュをまで行くこと。それが出来なかった時はディフェンスを寄せてシューターを生かすなどができれば」と「FIBA 女子アジアカップ2021」に向けて自らの役割を語った中田。ダイナミックなプレーでひと際目を引く選手ではあるが、スタッツには残らないプレーへの意識も高く、「取れるか取れないか分からなくてもルーズボールにからむ、ラインを出そうなボールでも追いかけてつなげるといった目立たないところでも頑張り続ける選手になりたい」と力強く発する。
自身も認める明るい性格の持ち主。「チームの雰囲気が悪い時や自分や誰かがミスした後などに元気に声出して盛り上げていきたいです。チームみんなで楽しく戦っていけたらいいなと思います」と、笑顔を見せるパワーフォワードは、日本の浮沈のカギを握る存在となるだろう。
9月27日から始まる「FIBA 女子アジアカップ2021」に臨む女子日本代表。スモールフォワードの宮下希保(トヨタ自動車アンテロープス)は、福井県立足羽高校時代からオールラウンダーとして全国レベルで活躍してきた。高校卒業後はアイシン・ウィングスに入団(昨シーズンまでアイシン・エィ・ダブリュ)。1年目からその得点能力を買われ、4シーズン、ポイントゲッターとして奮闘した。この4シーズン、いずれのシーズンで得点と出場時間ではチーム一の数字を残している。
そして今シーズン、アイシンからトヨタ自動車へと移籍。昨シーズンのWリーグ覇者の一員として新たな活躍が期待されている。
日本代表に目を向ければ、3x3女子日本代表として2018年の「第18回アジア競技大会(夏季大会)」で銀メダルを獲得。そしてトム・ホーバスヘッドコーチ体制の日本代表では2019年11月にマレーシアで開催された「FIBA女子オリンピック プレ・クオリファイイング・トーナメント2019(アジア・オセアニア)」に出場すると、積極的な攻撃で得点を重ねて鮮やかな代表デビューを飾った。
しかし、今夏の東京オリンピックでのメンバー入りはならず。今回、アジアカップのメンバーには赤穂ひまわり(デンソーアイリス)、馬瓜ステファニー(トヨタ自動車アンテロープス)、オコエ桃仁花(富士通レッドウェーブ)の同級生3人が東京オリンピックに出場していただけに、「オリンピックを見ながら3人から刺激を受けて私も頑張ろうと思っていました。また一緒にプレーできるのは楽しいです」と語る。
力強いドライブを得意とする宮下は、たとえシュートが外れたとしても、相手のファウルを誘うこともできるだけに、日本にとってもそれは強みとなるだろう。宮下自身は「泥臭いプレーも一生懸命にやっていきたい」とコメントしており、ひたむきな動きでもチームを盛り立てる構えだ。新天地で新たなスタートを切るシーズン。まずは日本代表選手として、アジアカップでは大きな存在感を発揮したい。