今夏、東京オリンピックで銀メダルを獲得し、大きなインパクトを与えた女子日本代表は、アジアでも前人未到の5連覇という偉業を達成した——。
抜群のスピードで攻防ともに足を動かしたプレーが持ち味の日本と2メートルを超える選手を2名擁し、高さで圧倒する中国。強みが異なるこの2チームが、前回大会に続いて「FIBA 女子アジアカップ2021」の決勝の舞台に立った。
出だしは懸念していた中国の高さに日本が苦しみ、インサイドプレーから失点を許す。オフェンスでも放つシュートが思うように枠を捉えず、日本はなかなかペースをつかめない。
だが、「ディフェンスが弱くなっていたので、プレッシャーをかけるポイント、ペイントエリアをしぼるポイントを明確にしました」(恩塚ヘッドコーチ)と、第1クォーター中盤のタイムアウト明けから日本はディフェンスの強さが増す。攻めては宮崎がジャンプシュートに3ポイントシュート、さらにはスティールからの速攻と次々と得点を決め、あっという間に11−13と点差を2点に詰めた。
オコエ桃仁花(富士通レッドウェーブ)の3ポイントシュートで始まった第2クォーターでは、山本麻衣(トヨタ自動車アンテロープス)が前日の準決勝に続き、アグレッシブなプレーでけん引。中田珠未(ENEOS)のフリースローや馬瓜ステファニー(トヨタ自動車)のドライブなども効果的に決まり、第2クォーター開始約3分で日本がリードを9点に広げた。
しかし、5大会ぶりの優勝を目指す中国もインサイドプレーやドライブなど多彩な攻撃で盛り返す。オコエら日本のインサイド陣が中国のセンターに体を張った防御を見せ、チームディフェンスも機能したのだが、前半は終了間際に連続得点を許し、36−39と3点ビハインドで終了した。
後半、宮崎の3ポイントシュートで早々に追いついた日本。第3クォーター中盤には再びリードを広げたが、第2クォーターと同じく、終盤に中国の高さに手をこまねき、またしてもビハインドを負う。それでも、点を取られたら取り返す展開となった第4クォーターでは、林(ENEOS)の速攻や赤穂ひまわり(デンソーアイリス)のディフェンスやリバウンドなどで、中国に主導権を渡さず。すると残り42秒、この試合で何度となく見せてきた宮崎のパスからオコエのシュートという2人の合わせのプレーが決まり、1点のリードを奪うと、日本は最後までチームディフェンスが機能。スピードが落ちることなく、最後は宮崎のフリースローで突き放して78−73と熱戦に終止符を打った。
苦しい試合を制してつかんだ優勝。勝利の立役者となった宮崎は「短時間で最高のチームを作ってくれた恩塚さんとスタッフの方に感謝したいですし、このメンバーで優勝できてうれしかったです」と感謝の言葉を口にした。
日本は、大会を通して、どんな相手にもスピードを武器に機動力と連携プレーで上回った。それだけでなく、「選手たち自身で考え、自分たちを高め合うコミュニケーションや練習をしていることが最大の強みだと思います」と恩塚ヘッドコーチは笑顔で優勝の要因を語る。
今大会は、東京オリンピックの銀メダリストは5名。3x3女子日本代表選手を含め、若手選手を中心とした編成となった。決して楽な戦いではなかったが、どんな状況でも勝ち切る強さを身に付けた選手たち。この優勝は、この先も続く女子日本バスケットの未来に大きな期待を抱かせるものとなった。
なお、大会個人表彰は以下の通り。MVPには数字に表れないところでの働きも大きかった赤穂が選出された。
【オールスター5】
宮崎早織(日本)
サマンサ・ウィットコム(オーストラリア)
赤穂ひまわり(日本)
黄思静(中国)
李月汝(中国)
【MVP】
赤穂ひまわり(日本)