精神分析医(サイコセラピスト) 氷室想介の事件簿~超高層ビル密室殺人の謎~

あらすじ

氷室想介役の小泉孝太郎さんと田丸有希役の美村里江さんに、役の見どころや撮影エピソードなどを伺いました!

―― 台本を読んで、どんなところに魅力を感じましたか?

小泉:同級生の氷室と有希がコンビのように捜査をしていきますが、氷室は精神分析医で、有希は刑事。向かっている方向は同じでも職業がまったく違うというところが、すごく面白いですね。関係者に聞き込みをしていても、僕は刑事ではないというのが新鮮です。

美村:会話が面白いですよね。推理ものは必然的に説明が多くなりますが、この作品は雑談も多くて、そこが魅力的だなって。二人で言い合っていても信頼関係を感じるし、違う視点を持っているから助けてもらえる間柄。原作は、私の役は男性で、これが女性に変わったらどうしたらいいだろうと思いましたが、台本を読んだら「あ、面白い!大丈夫!」って。このコンビはいいなと思いました。

―― 二人の関係性を出すために、何か相談を?

小泉:現場でいろいろ話もしましたが、すぐに馴染みましたよね?推理ものは役の人間性まで出すのが難しいことが多いんだけど、この作品は脚本にそれがしっかり出ている。中学時代のことを説明するセリフはあまりないのに、二人の関係性がよくわかります。僕が想像するに、氷室は中学の頃から有希ちゃんのシモベ・・・といったら語弊があるか。信頼関係をベースにした上下関係が成り立っていて、「氷室君、ちょっと焼きそばパン買ってきて!」「うん、いいよ」みたいな(笑)。

美村:そうそう。氷室君が誰かに絡まれていたら、有希が助けてあげて。有希はまたそれを恩に着せて「この間、助けたよね」みたいな(笑)。

小泉:二人の歴史の中で、氷室は有希ちゃんにはかなわない。絶対的なお姉ちゃんと弟のようで、氷室は常に引っ張ってもらっている感じ。美村さん自身が素晴らしい感性をお持ちの女優さんだから、僕もついていく、その芝居がとても楽しいですよ。

美村:十数年前にドラマでご一緒した時、コメディータッチの小泉さんがとても魅力的で、今回もきっと面白いだろうなと思っていました。氷室さんと有希はバディのような関係だから、いろいろ話し合ってできたのがうれしいです。お互いに「多分こうだろうな」というものを現場に持ち寄って、それがバチッとハマった時、「よかった!」って。

―― それぞれのキャラクターについて教えてください。

小泉:精神分析医の役だから、衣装は白衣やスーツかなと思っていたんです。でも、用意されていたのは少しダボっとした感じのコーデュロイのジャケットやパンツ。有希ちゃんが刑事だから、確かに僕はちょっと崩した方がバランスが面白いなって。診察室も病院というより個人宅の部屋のよう。だから、なるべく“先生”の感じはそぎ落として、自然体でやわらかい感じの氷室想介を心掛けました。

美村:私も氷室さんの衣装を見た時に「やった!」って思ったんですよ。外見も突っ込みどころがあるといいなと思っていたので。ちょっぴり間が抜けた氷室さんのコミカルな部分を感じるし、患者さんの心にすっと馴染む優しさがありますね。ほんわかした氷室さんが横にいると、捜査の時の有希のピリッと感が出せるのはありがたいです。ただ、有希は家ではジャージ姿。息子を連れて近所の中華料理店に行き、実はかなりの大食いという・・・。

小泉:有希ちゃんのジャージ姿、僕好きですよ!

美村:私も好きなシーンです。有希は仕事ではビシッとしているけれど、わりとズボラな性格だから、もしかしたら中学の頃のジャージもまだ持ってるんじゃないかということで、そういう設定になりました。

小泉:外では優秀な刑事、家では中学時代のジャージ姿。そういうかわいさは世の中の女性にも好感を持たれそう。このドラマは、この先の二人のことも想像させるし、すごく素敵な台本だなと感じます。

―― 撮影で特に思い出深いことはありますか?

美村:山中湖は行った甲斐のあるいい映像が撮れましたね。今回すごくチームに恵まれ、天候にも恵まれたなって。1月の撮影なのに風がなくて穏やかで。全体的に平穏に撮影が進んでよかったなと。

小泉:お互いに「山中湖は肝のシーンだから、どうにか乗り越えたい」って言ってたんだよね。ぜひ楽しみに見ていただきたいです。山中湖と言えば、君島刑事役の松本岳君が白鳥に好かれていたのが印象的。2匹の白鳥が彼にまとわりついている姿に、とっても癒されました。

美村:癒されましたねぇ。白鳥はけっこう強気で「おまえ、パンとか持ってないのかよ?」みたいな(笑)。

小泉:そう。彼が持っているカイロを見て「え、パンじゃないのかよ!」みたいな。僕、松本君を「白鳥デカ」って呼んでました(笑)。

美村:「白鳥デカ」!それで話が1本作れますね(笑)。今回は撮影の合間の雑談も面白くて、笑っていたら最終日になっていたという感じ。お芝居とのメリハリがあって、本当に楽しかったです。

―― 人の心理にまつわる言葉や仕草が出てきますが、お二人も何かクセはあります?

小泉:氷室のセリフで「代償の防衛機制」とか「コンコルド効果」、「バンドワゴン効果」といろいろ出てきますが、人間はやっぱり無意識にそういう言動をすることがあるんだろうなって。どれも納得しましたね。

美村:確かにあるだろうなって思いました。個人的には、私はメイクさんに「鼻歌歌ってますね」ってよく言われるんです。最初は自覚がなくて「え、本当に?」と思っていたんです。でも、よくやっているんですね。なんでかと言うと、仕事が好きで楽しいので、これから芝居ができると思うと機嫌がよくなって、そうするとだいたいメイク中に「んん~♪」みたいな、謎のリズムが出てしまう(笑)。

小泉:確かに美村さん、歌ってます!芝居のリズムにつながるわけですね。そういう意味では、僕も本番前にゴルフクラブのグリップを握る格好をしちゃうんだけど、それもリズムなんだろうな。今回、僕のそのクセを見た美村さんが、「小泉さん、今グリップ握りましたね?」って。で、僕が右足から左足に体重を移動したら「今、スイングしましたね?」って。手は動かさないで頭の中でスイングしたのに、体重移動だけでわかる美村さん、すごい!

美村:役者は何かしらありますよね。芝居と芝居の合間もエンジンをかけっ放しにしておくというか、ちょっと時間が空いても自分のペースに戻す何かを持っている。あと、私たち台本の使い方がすごく似てましたよね? 役者って台本に書き込みをしたり、マーカーを引いたり、付箋を張ったりといろいろな人がいますけど、私たちは何も書かない。そして、最後の空白ページに、その日の撮影スケジュールがわかるように、シーンナンバーを書いておく。まったく一緒だったことにびっくりしました。

小泉:僕も驚きました。そういう人は初めて。ただ、美村さんは台本をきれいに使っていますが、僕のはボロボロ。気がつくと醤油とか飛んでいて(笑)。

美村:私もお弁当の米とか挟まってます(笑)。台本の使い方がどういう心理を表しているかはわかりませんが、面白いですよね。役者の個性みたいなものはけっこう出ると思うので。

―― この作品で特に注目してほしいところは?

小泉:一番注目してほしいのは、氷室と有希ちゃんのバディ感。演じていても、そこが本当に面白かったので。精神分析医と刑事のやり取りが実に秀逸な脚本なので、そこを楽しみながら、密室殺人事件の真相を推理していただきたいです。

美村:氷室さんと有希はきっと情に厚いタイプで、人を助けたい思いが共通している。そういう点で二人は仲がいいのかなと思います。それから、氷室さんのカウンセリングの言葉が気取り過ぎてないですよね。専門的な言葉も出てきますが、例えば「いいんじゃないですか?それで」みたいなことも言う。本音で向き合ってくれているという感じがすごくするし、今、世の中の人が聞いたら気持ちが楽になりそうな言葉もあるので、その辺りも期待していただければ。等身大の氷室想介という精神分析医が言うと、「あ、そうかもしれない」と思ってしまう。推理とプラスαの部分を楽しみにしていただきたいですね。

小泉:生きる意味がわからないという人に対して、氷室が「生まれて、生きる。これだけで十分じゃないですか」というようなことを言いますが、自分自身の人生観とも少し重なって、一番好きなセリフです。それと、気持ちのいい余韻がある作品だと思うので、最後まで楽しみにご覧いただけるとうれしいです。